カメ命拾い3千キロの旅 中国で僧侶が放流 父島で保護

 中国・広東省で危うく食用になるところを地元の僧侶に救われ、海に返されたウミガメが今月中旬、小笠原諸島(東京都小笠原村)の父島に上陸し、産卵した。NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(本部・横浜市)が運営する小笠原海洋センターが、カメの甲羅に書かれた地名や日付をもとに確認した。放流地とは直線距離で約3000キロ離れており、カメを救った尼僧の釈文敬(シー・ウェンチン)さん(82)は「カメが日本で無事でいることが分かって、とてもうれしい」と話している。

 同センターの山口真名美所長によると、メスのアオウミガメで、甲羅の長さは約90センチ、体重は120キロ余り。父島・二見湾内の砂浜に14日夜、上陸した。翌日も同じ場所に上陸したが、砂が少なく産卵できない浜だったためセンターの施設で保護したところ、16日に77個の卵を産んだ。

 小笠原では、アオウミガメが漁業の対象になっているが、カメ漁師に捕まることもなかった。

 甲羅には「広東」「普善庵」「徐聞」などの漢字が赤く彫り込まれていた。山口さんは、知人で北海道大大学院に留学中の中国人女性、任敏儀(レン・ミンイー)さん(23)に相談した。任さんがインターネットで調べたところ、中国の現地紙「羊城晩報」が今年1月中旬、広東省徐聞県にある普善庵という寺の僧侶がウミガメを助けて海にもどしたという記事を掲載していた。

 同紙によると、商人がウミガメをレストランに売ろうとしているのを知った僧侶が4500元(約7万2000円)で買い取り、地名や日付などを甲羅に記して翌日海に放した。

 朝日新聞が任さんに問い合わせてもらったところ、カメを救ったのは尼僧の釈さんと分かった。寺関係者の話では、同寺はウミガメを何頭も救ってきたが、今回は特別に大きく、みなでお金を集めて買い取り、寺で一晩保護したうえ、海に返した。放流してもウミガメは何回か岸に戻ってきたが、やがて海に消えた。放流地の港では、数百人の群衆が沖へ向かうカメを見守り、お祭り騒ぎだったという。

 山口さんは「中国本土で放されたウミガメが小笠原まで泳いできたこと自体、非常に珍しい。しばらくセンター内で保護してさらに産卵を見守り、8月上旬をめどに海に返したい」と話している。

 日本ウミガメ協議会(大阪府枚方市)によると、ウミガメの個体を識別するには通常、体に取り付けたプラスチック製や金属製の標識が使われる。今回のように、甲羅に書かれた文字で同じ個体と分かるのは珍しいケースという。

朝日新聞 2007年05月22日12時22分

カメが取り持つ日本と中国の関係。
野生生物にとってみれば国境なんて関係ないんだよなあ、ということを改めて思い出させてくれるニュースです。


しかし、ちょっと気になるのは、中国のお寺。
助けるところまではすばらしいと思いますが、なぜ甲羅に省の名前やら寺の名前やらをやたらと書く。しかも彫る。

「私たちが、あなたを助けたのですよ。恩返しをするならば、広東省徐聞県の普善庵ですよ。お間違いなきよう。」
ということなのでしょうが、、、、


カメを助けて恩返し、日本の昔話はやっぱ中国に起源があるんだろうなあ、ということも、改めて感じました。
まあ、基本は仏教思想なのでしょうが。